「とりあえずビール!」で乾杯して、最初はカッと身体が熱くなったのに、気づけば身体が冷えて震えていた……なんて経験はありませんか?
一方で、日本酒を飲んだときは、身体の芯からじわじわと温まり、その温もりが長く続くような感覚がありますよね。実はこれ、単なる気のせいではなく、科学的に明確な理由があるのです。
今回は、SAKE HERITAGEの読者の皆様に、なぜ日本酒が「冷え知らずのお酒」と呼ばれるのか、そのメカニズムを4つのポイントで解説します。

理由1:血管を広げ続ける「アデノシン」の力がすごい
お酒を飲むと身体が熱くなるのは、アルコールの作用で血管が広がるからです。しかし、ビールや酎ハイの場合、アルコールが抜けると血管はすぐに収縮し、急激に体温が奪われてしまいます(いわゆる湯冷め状態)。
ここで日本酒の凄さが発揮されます。日本酒には、「アデノシン」という成分が他のお酒に比べて圧倒的に多く含まれているのです 。
- 日本酒のアデノシン量: ワインやウイスキーの数倍〜数十倍
- アデノシンの働き: 血管が縮もうとするのを防ぎ、広がった状態をキープする
つまり、日本酒は単に血管を広げるだけでなく、「広げたままにする」成分が入っているため、温かい血液が身体の隅々まで長時間巡り続けるのです 。これが「ポカポカが長く続く」最大の理由です。
理由2:飲むだけで熱を生む?「アミノ酸」のチカラ
2つ目の理由は、日本酒の原料である「お米」と「発酵」にあります。日本酒は醸造酒の中でも特にアミノ酸が豊富です。なんとその数はワインの数倍とも言われます 。
人間は食事をすると、栄養を分解するときに熱が発生します(食事誘発性熱産生)。中でもアミノ酸(タンパク質)は、燃焼するときに最も多くの熱を生み出す栄養素です 。
- ビール・酎ハイ: アミノ酸が少ない、または蒸留過程でほぼゼロになる。
- 日本酒: 豊富なアミノ酸が分解される過程で、身体の内側からボイラーのように熱を生み出す。
日本酒を飲むことは、アルコール摂取であると同時に、身体を温めるための「燃料」を補給していることにもなるのです。
理由3:炭酸がないから「急激に冷えない」
ビールや酎ハイ(サワー)の爽快感の正体である「炭酸ガス」。実はこれが冷えの原因の一つです。 炭酸ガスには胃の働きを活発にし、アルコールの吸収を一気に早める作用があります 。
- 炭酸で急激に吸収 → 一気に血管が開いてカッと熱くなる。
- 熱が一気に放出される → その反動で、急激に体温が下がる。
この乱高下が「寒気」の正体です。対して日本酒は炭酸を含まず、吸収が緩やかです。体温の急激な変化が起きにくいため、穏やかな温かさが持続するのです 。
理由4:東洋医学でも証明された「温める性質」
少し視点を変えて、東洋医学(漢方・薬膳)の話をしましょう。食材には身体を温める・冷やすという性質(五性)がありますが、ここでも違いは明確です。
- ビール(大麦・ホップ): 身体を冷やす「寒性・涼性」。夏に暑さを払うのには最適ですが、冬には不向きです 。
- 日本酒(米・麹): 身体を温める「温性」。気と血の巡りを良くし、冷えを散らす効果があるとされています 。
昔の人は成分分析などできない時代から、体感として「日本酒は身体を温める薬(百薬の長)」であることを知っていたのですね。
まとめ:冬こそ日本酒を楽しもう
日本酒が温かい理由は、「血管を広げ続ける成分」「熱を生むアミノ酸」「穏やかな吸収スピード」そして「お米本来の温める性質」が見事に重なり合っているからでした。
さらに、日本酒には世界でも珍しい「お燗(Hot Sake)」という文化があります。物理的に温かい液体を体内に入れることで、内臓から直接温まることができる最強の冷え対策ドリンクと言えるでしょう 。
まだまだ寒い日が続きますが、今夜はビールではなく、温かい日本酒で、心も身体も「ポカポカ」な夜を過ごしてみてはいかがでしょうか?
コメント